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2010.08.20

悪路で不慣れな状況の中、長時間のバス移動でぐったりしながらうつうつとしていたとき、「王子製紙や!えんとつや!」と言って祖母が後部座席の方から走って来た。座っているだけでも大変な、でこぼこ道を走るバスの中を、一番前の席に座っていた私の元へ急いで移動して来たのかと思うと、相当な興奮だったようだ。

玉音放送を聞いた避難先の泊居(とまりおる)から、故郷の恵須取(えすとる)へ一ヶ月かけ歩いて戻って来たとき、遠くに見えた4本の煙突に「ああ、帰ってきたんだ」と安堵したという。当時、全島屈指の規模をもっていた王子製紙恵須取工場のそれらの煙突は、街のシンボルマークであり、発展の要であり、恵須取の人たちの誇りだったのだ。