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2012.08.24

サハリンを旅していると、前後の文脈が想像しにくい風景に突然出くわす。日本時代、「珍内(ちんない)」と「恵須取(えすとる)」を南北につないでいた幹線道路は間宮海峡をすぐ左の眼下に臨み、右手には青々とした草野原をどこまでも広げている。決して楽しい車窓風景ではない。民家も数キロ、もしくは十数キロに1、2軒が建っているのみで、いつまでたっても舗装されない道の理由がなんとなく想像できる。そこへ突然現れる、主を持たない牛の大群や、犬。更には子供が一人で歩いてきたりする。北海道より北といっても、夏は30度近くまで気温があがり、涼みに宿る木陰もないこの道の、一体どこから、そしてどこへ向かっているのだろう。その子供は、私たちのバスが巻き上げる噴煙にも全く動じず、ただ照りつける太陽に目を細めながら、ひたすら歩き続けていった。