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2011.08.10

帰りに乗った船で子連れのロシア人女性に話しかけられた。年も近いし、日本までの5時間半、良い話し相手になってくれると思った。しかし、しばらく話していると、彼女は急にかばんを探り、動揺し始めた。初めての日本への旅行にも関わらず、換金して来た日本円を全て忘れて来てしまったという。稚内に着き、ロシアルーブルを換金してくれる銀行を探したが、どこも取り扱っていない。彼女の持っているクレジットカードを受けつけるATMもなかった。少しでも元気づけようと思い駅前でラーメンをごちそうした。札幌に友人がいるので、そこまでの電車代を貸してくれないかと言われた。3歳の娘はぐずり、泣きじゃくっている。パスポートを預けるからと懇願されたが、最後の望みをかけてJRのみどりの窓口へ向かった。駅員に尋ねると、幸運にも彼女の持っていたクレジットカードが使えた。無事札幌への特急券を買うことができた彼女は、とても喜び「もし、サハリンに来たい時はいつでも連絡をちょうだい。招待するから!」と言ってくれた。彼女の名前は「カーチャ」といった。

ソ連が崩壊して20年経ったが、まだまだロシア国内をバックパック一つで自由に旅行することは難しく、ビザを申請する際には滞在先のホテルからバウチャーというものを発行してもらうか、現地で身元保証人となってくれるような人が必要だった。

カーチャの発行してくれた招待状を持って、1年半後、冬のサハリンへ渡った。