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2013.02.10

眠り半ばで「起きて!起きて!」という甲高い声が聞こえる。それがトーニャとわかるまで、しばらくかかった。そうしているうちにもうすぐ着くわよ、とカーチャが言うのであたりを見回すと、まだどこかの雪原を走っているようだった。出発からはすでに1時間がたっていた。

それから5分もしないうちに車は止まった。着いた、というのに海がないのだ。ここじゃない、というわたしに、カーチャとジニアはお互い見つめ合い、クスクスと笑うだけだ。5歳のトーニャは、座り心地の悪い椅子からやっと解放された嬉しさのあまり、帽子と手袋を急いでつけ、雪原へと駆け出した。そのあとをジニアが追う。カーチャが「どうして海に来たかったの?なにもないのに!」という。確かに何もない。焦げ茶色の砂浜の波打ち際を走る、白いふわふわした「塩の花」はもちろん、海そのものの姿も気配もない。「オホーツクよ。ずうっと向こうまで、凍ってるけどね。」と言って、カーチャは2人のもとへ走っていった。