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2012.08.25

フレップは、アイヌ語で「赤い実」という意味なのだと祖母が教えてくれた。夏も中ごろになると、家族で山に採りに行ったり、学校が終わるとおやつ代わりにつまみながら帰った思い出の味だそうだ。初めてサハリンに行く道中、一緒になった樺太っこたちは口を揃えて、フレップが食べたいと言った。フレップ、という言葉が出てくるだけでみんなの顔がほころび、砂糖付けにしてシロップやジャムを作ったり、親が焼酎漬けにするのを手伝ったりしたんだと、それぞれの思い出をかわるがわる聞かせてくれた。祖母に言わせると「今でいうブルーベリー」らしいのだが、他の人は「コケモモ」だったり、「ラズベリー」だったりする。山に群生するものはひざ丈くらい。沼地に生えているものは「ヤチフレップ」など種類がいくつかあるようで、証言はまちまちだが、とても甘いので、こっそり食べ続けていると口の中が真っ黒けになり、しらばっくれてもすぐ見つかってしまったという経験はみんなが共通して持っていた。私たちの渡航は毎年夏だが、いつも少し早いか遅いかで、自生している姿にありつけたことがない。

民家の庭先で何か手作業をしている子供たちがいたのでのぞいてみると、容器いっぱいの赤い実だった。もしかして、とひとつぶ食べさせてもらうと、甘いどころか、酸っぱすぎて思わず顔をしかめてしまった。