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2012.08.25

「25年も乗っているんだ、かっこいいだろう。」そう言って、アンドレイは揚々と車から降りて来た。アンドレイはステフの兄で、同じウグレゴルスクの街に住んでいる。ロシア製のラーダ・ニーヴァ。年数の割に、美しい真紅の外装は丁寧に手入れされてきた様子がうかがえる。内部の座席には緑色のギンガムチェックのストールが敷かれ、ギアの取手部分には貝殻の入った琥珀色のガラス玉が施されてあり、車への愛着がひしひしと伝わってきた。「これがかの有名なロシアの道路よ!」というジョークがあるくらい、悪路の多いサハリンの道もなんなく走る。内部の構造は非常にシンプルで、壊れてもすぐ直せるのがメリットだ、と言っていた。街中などで、よく日本車を見かけるが、それはどうかと尋ねると、「日本車は故障も少なくてとても優秀だ。だけど壊れた時がやっかいだ。複雑すぎてなかなか自分で修理できない。」と言っていた。

天気が良いので、みんなで海へ行くことにした。「ダワイ!(乗りなさい)」とアレクセイが勢いよく助手席のシートを持ち上げた。操作レバーが壊れているらしく、ボルトで固定されているはずの部分からシートごと上げて、後部座席へと誘導してくれた。面食らっていると、まあいいから、と言わんばかりのナージャに車に詰め込まれた。勢い良く発進した真っ赤なニーヴァは、忙しくギアをあげ、大げさなエンジン音を響かせながらも海を目指してひた走る。小難しく繊細な日本人の気質が捨てきれず、サハリンで戸惑うことは多々あるが、大雑把だけどもまっすぐで、愛嬌のあるロシア気質がだんだん好きになっていく。